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レポートの実例

経済展望レポート(2019年1月28日号)

中国が景気の失速を免れるために、金融と財政の両面からさらなる対応策を打ち始めています。そこで今回のレポートでは、(1)世界経済で考えなければならないもう一つのシナリオ、(2)ダウ理論から見た米国株と日本株のトレンド、の2点について述べたいと思います。

まず(1)の「世界経済で考えなければならないもう一つのシナリオ」については、その新たに浮上しつつある悲観的な内容を申し上げる前に、元々考えていたシナリオを改めて申し上げたほうが、みなさんの理解が深まるだろうと思っております。ですから先に、米国の景気が2019年から大幅に減速し、2020年には後退にまで至る結果として、世界は1年~1年半程度の同時不況に陥るというシナリオについて説明いたします。

米国経済には2018年以降、大幅な減速の予兆と見て取れる指標が表れ始めてきています。景気に遅れて反応する雇用関係の指標は未だに好調を維持していますが、先行きを暗示する指標である企業の景況感は、株価の下落や中国・欧州の減速を受けて悪化し始めているのです。たとえば、2018年12月の米ISM製造業景況感指数は54.1となり、前月から5.2ポイントも低下してしまいました。2016年11月以来2年1カ月ぶりの低水準となっただけでなく、その低下幅は2008年10月以来およそ10年ぶりの大きさとなっています。

そのうえ、米国経済を2年程度先取りする住宅市場でも、減速感が鮮明になってきています。米国の住宅関連の指標のなかでは、・・・(以下中略)

景気の失速を回避するための習指導部の強い意思の表れだとはいえ、これらの債務が膨張する政策をこのまま続けていけば、その副作用によって中国企業の経営効率はいっそう下がっていくことになるでしょう。すでに数年前の段階では、リーマン・ショック後の中国はGDPを1兆ドル増やすために企業部門だけで2兆ドル超の債務を増やす必要があったのですが、現在の中国ではGDPを1兆ドル増やすのに3兆ドルの債務が必要だという新たな試算が出ているほどなのです。とりわけ債務比率が高い不動産、鉄鋼、金属、資源などの分野に属する企業の多くでは、債務不履行に追い込まれるという懸念が常にくすぶり続けています。

債務不履行の懸念は、民間企業に対してだけではありません。民間企業の債務が22.1兆ドルとあまりに膨大なために見過ごされがちですが、家計の債務も6.6兆ドルに増加し、GDPでは49.3%と2年程度で10ポイントも急上昇しているのです。北京や上海などの大都市では、共稼ぎの夫婦の収入の大半が住宅ローンの返済に回っているケースが珍しくはないということです。これでは消費が伸びるわけがありません。中国で所得税を払っている人々は全国民の2%程度にとどまることを考慮すれば、所得減税に消費の押し上げ効果はないといえます。もっとも効果がある処方箋は、家計資産の多くを占める住宅価格を値上がりさせることですが、日本のバブル崩壊を精緻に分析している習指導部が売買規制の緩和に踏み出せないのは当然のことでしょう。

中国の民間部門で膨張している債務は、世界経済にとって大きなリスクとなりつつあります。債務削減を実行して6.5%の成長率に落ちるのと、逆に債務を膨らませて6.5%の成長率に落ちるのとでは、これからの世界経済の流れが大きく変わってきてしまいます。中国がこのまま無理をして景気の下支えを続けるようなことがあれば、1年~2年は景気の底割れを防ぐことができるかもしれませんが、次に来る世界的な不況が普通の不況では済まなくなってしまうでしょう。中国のバブルが弾ければ、日本を筆頭にアジア諸国や欧州各国で経済が大打撃を受けるのはもちろんのこと、米国も相応の痛みを伴うことが避けられないでしょう。そういった意味では、私たちはもう一つの世界経済のシナリオを意識する必要性に迫られていると言えるでしょう。

次に(2)の「ダウ理論から見た米国株と日本株のトレンド」についてですが、2018年12月の時点では同じような方向性を示していた日米の株価のトレンドが、2019年1月を境に違った株価トレンドを示し始めています。ですから、この局面ではかの有名なチャールズ・ダウが述べていた理論を説明しながら、現在の日米の株価トレンドを正確に判定したいと思っております。

ダウ理論における上昇トレンド、ボックストレンド、下降トレンドをざっと説明させていただくと、・・・(以下中略)

そのような見方に基づいて判断すると、NYダウは未だ下降トレンドに入ったとはいえず、ボックストレンドに入った可能性が高いといえるでしょう。これに対して、日経平均は「直前の底のひとつ前の底が2万1000円であり、NYダウの大幅な戻りに比べて、未だに2万1000円を上へ抜けることができていません。ですから、現在の日経平均はダウ理論で見れば下落トレンドの途上にあり、本当の意味では1月17日のミニ情報で述べたようなボックストレンド(1万9000円~2万2000円・上値は暫定値)ではありません。

しかし実践的な対応では、今後のボックスの上限(21日高値の2万892円になるのか、あるいは2万1500円程度になるのか、あるいは2万2000円程度になるのか)を見極めながら戦略を構築していくのが正しい判断になりそうです。なお、トレンドが継続しているのかどうかをいち早く判断するためには、まずは日足のチャートを見るようにします。週足のチャートは日足のチャートでした判断を補完するために使用するのがいいでしょう。

経済展望レポート(2018年12月10日号)

本年の最後を締め括ることとなる今回のレポートでは、(1)米長期金利が再び2%台へ、(2)長短金利の逆転、(3)OPECの先行き、(4)米中の妥協はあるのか、(5)中国経済の苦境は続く、(6)2019年は円高の年、(7)セオリーが通用しない日本株、(8)10倍株は結果論、(9)相場勘の話(続編)、の9点について簡潔に述べたいと思います。

まず(1)の「米長期金利が再び2%台へ」については、パウエルFRB議長が10月初旬のFOMC後に、政策金利は「中立金利には距離がある」と発言したのに対して、・・・(以下、中略)

続いて(6)の「2019年は円高の年」については、11月のFOMC以降、米国の利上げが想定以上に早く終わるとの観測が広がっていることと深く関係があります。従来のFRBの利上げのシナリオでは、2018年にもう1回、2019年に3回、2020年に1回という内容でしたので、現在の政策金利の年2.00~2.25%は将来的には3.25~3.50%まで引き上げられるという見通しでした。ところが、FOMCの議事要旨に基づけば、多くの市場関係者が2019年中にも利上げが打ち止めになる可能性が高まってきていると見ているのです。

先ほど、「過去の経験則は少しだけ参考程度にするくらいの姿勢でいい」と述べましたが、FRBの利上げが終了し、利下げが始まるまでの局面においては、円高・ドル安の傾向が徐々に強まっていくという経験則があります。大きな流れに従えば、この経験則は信用できると思います。そのうえ、FRBが利下げに転換する局面では、日銀は円高を防ぐ手段をほぼ使い果たしてしまっているので、さしたる抵抗感もなく円高が進みやすいという状況は押さえておかねければなりません。ここから2年~3年のスパンで見れば、海外の投資家が投機的な円買いを進めてくる環境は整いつつあるように思われます。

さらには、貿易に関する調査を担当する米政府機関である米国際貿易委員会が12月6日に開いた公聴会では、自動車産業の労働組合が日本に対し通貨安誘導を禁止する為替条項の導入を求めています。同委員会は2019年1月を目途に報告書をまとめ、米通商代表部(USTR)に提出しますが、来年の1月に始まる日米のFTA交渉(日本政府はTAGと言っていますが)では、為替条項の是非が大きな議題になってくる可能性が高まってきています。日本の投資家は海外の投資家以上に、米国の利上げの終了が早まることをネガティブに捉える必要があるのではないでしょうか。

次に(7)の「セオリーが通用しない日本株」についてですが、(6)との関連において、過去の経験則を振り返ってみると、米国の利上げの終了から利下げの開始までの時期は、米国の株価が天井を付けるタイミングとほぼ重なってきたといえます。そういった意味では、利上げの終了が早まることは、むしろ米国株にとって調整入りの兆しと捉えたほうが適当であるでしょう。大きな流れでいえば、(6)と場合と同じように、この経験則は信用できると思います。もちろん、米国株との連動性が強い日本株にも同じ傾向が見られるので、日米双方の株価はすでにピークを打ったと考えて問題ないでしょう。

過去5年間で10-12月に海外投資家が大幅に買い越す傾向が続いていたことから、市場関係者のあいだでも11月上旬までは年末ラリーへの期待が大きかったのですが、海外投資家は11月第4週も2101億円を売り越し、10月以降の売り越しが5500億円超にまで拡大しています。先週あたりからは、海外でも中長期の投資家が大型株を中心に売ってきているため、10-12月は売り越しのままで終わる可能性が高まってきているのです。海外の株式ファンドの年初からの運用成績はマイナスとなっており、資金流出に備えた現金化はまだ続くと見たほうが無難でしょう。いずれにしても、来年以降の日本株は、通用しそうなセオリーと通用しないセオリーを吟味しながら、柔軟に対応していく必要がありそうです。

次に(8)の「10倍株は結果論」については、毎年、秋口から年末に向けての時期に、マネー誌などから「10倍株を推奨してほしい」という依頼を受けることがあります。しかし、経済構造やビジネスモデルが目まぐるしく変わっている現在において、10倍に化ける銘柄などわかるはずがありません。10倍株は見つけようとして探せるわけではなく、10倍になったのは結果論にすぎないというのが、私の考え方です。

そういった意味では、人生に一度でも10倍株を経験できれば大きな幸運に巡り合ったと思うことができるし、そもそも10倍になるまで持ち続けることが難しいのではないかと思ってしまいます。仮に10倍まで持ち続けることができた個人投資家がいたとしたら、その成功体験から抜け出すのは容易ではないでしょう。大成功の後は、売るタイミングがわからなくなってしまうかもしれません。10倍株を連発しているなどという話には、決して近づいてはいけません。

最後に(9)の「相場勘の話(続編)」について、勘は危険を察知するのに適していると思われます。実は、この勘が2017年末と同じくらい肌感覚でわかっていたのは、2006年末~2007年にかけてです。11月13日号で取り上げた「基本的な投資スタンスの確認」において、なぜ2007年~2013年をボックストレンドと下降トレンドの期間にしていたのかというと、2007年~2010年は激しい下降トレンドが来た後で、2011年~2013年はボックス相場になるだろうと考えていたからでした。

投資スタンスのベースとなっている書籍が出版された2007年6月当時は、経済メディアでは「過去数十年で世界経済が最も好調な時期」と囃され、株式市場では「株価はあと数年上がり続けるだろう」といわれていました。しかし実際には、2007年8月にパリバ・ショック、2008年9月にリーマン・ショックが起こってしまいました。相場勘と合理的な解釈が合致したからこそ、そのような判断ができたわけですが、投資でもっとも重要なのは、暴落によって大怪我を負わないということです。ひとたび大怪我を負うことになれば、元の状態に回復するまでに数年の期間を要するかもしれませんし、場合によっては再起不能に追い込まれてしまうかもしれないからです。

これに対して、近年で失敗だったと思うのは、トランプ大統領の誕生とその後の彼の政策の方向性がまったく読めなかったということです。合理的に考えれば考えるほど彼の考えはわからなかったばかりか、相場勘も思うように働かなかったからです。理解不能な大統領には、私もすっかりお手上げというしかありませんでした。しかし、その甲斐があって、2019年以降の展開は却って読みやすくなっていると思います。

年内のレポートは、この12月10日号を以って最後とさせていただきます。みなさんにおかれましては、現金を100%にしているでしょうから、枕を高くして安心して年末年始をお過ごしくだされば幸いです。

経済展望レポート(2018年10月14日号)

先週は米国株が暴落し、日本株も大幅な下落に見舞われました。そこで今回のレポートでは、(1)米国の長期金利上昇の衝撃、(2)株式市場の暴落に動じない姿勢、(3)日銀が出口に進めない状況へ、(4)逃げ切る癖をつける、(5)米国株は長い調整に入ったのか、の5点について述べたいと思います。

はじめに(1)の「米国の長期金利上昇の衝撃」については、米国の長期金利が9月下旬からの上昇によって、これまで壁として跳ね返されてきた3%のラインを突破してきました。その後は3%の壁を明確に突き抜けて3.2%台まで上昇し、・・・(以下、中略)

続いて(4)の「逃げ切る癖をつける」についてですが、株式市場で長生きする秘訣があるとすれば、まさに「逃げ切る癖」は重要であると考えております。自らの投資戦略と現実の相場のあいだに少しでもズレが生じてきたと思ったら、迅速に戦略を修正しリスクを低下させることが欠かせない行動パターンであると、常々実感しているからです。いかに小幅な利益でも利食いができるか、いかに小さい損失で逃げることができるか、といった具体的な事例は8月~9月のレポートでも実証されています。

たとえば、安川電機のケースでは、私は中国の景気刺激策の効果が7月には表れてくるだろうと考えておりましたが、実際に中国の経済指標が7月も軒並み減速の傾向を抜け出していないのを見て、戦略を迅速に修正し逃げることを優先させました。現に、中国の経済指標の鈍化は8月も続き、9月にはついに新車販売台数が11%減となり、今年の新車販売台数は前年割れになるという見通しが述べられるようにまでなってきています。月に2回のレポートなので、本当の意味では迅速とはいえないかもしれませんが、それでも良いタイミングで逃げることをアドバイスできたと思っております。

同じようにメルカリについても、良いタイミングで利益確定するタイミングを示すことができたと思っております。レポートでも述べましたように、ちょっと戻すペースが速すぎると思ったので、欲張らずに利食いをするのが無難であると判断いたしました。とりあえず現金化をしておいて、次に備えるという考え方がぴったりとはまったケースでありました。かねてから2018年は難しい相場になることがわかっていたので、決して欲張る必要はなかったというわけです。はっきりとした答えがないに等しい投資の世界では、状況に応じて柔軟に戦略を修正しながら、利益を最大化させるよりも、損失を最小化させるほうが優先されるべき考え方です。

最後に(5)の「米国株は長い調整に入ったのか」についてですが、NYダウ平均は先週だけで1107ドル下げました。正直申し上げて、今年2月の暴落を冷静に見ていたせいか、先週の下げ幅が史上5番目だといわれてもあまり驚きませんでした。足元の株価暴落によって、米国株のPERは15倍台後半と2016年2月以来の水準に下落していますが、2月の暴落後のような戻り相場が期待できるのかというと、私は難しいのではないかと見ております。割高感が薄れてきたとはいっても、それが景気後退を意識しているものであれば話は変わってくるからです。

今年の年初とは異なり、今後の世界経済は米中貿易戦争をはじめ、イタリア財政問題の蒸し返し、新興国の資金流出への懸念、英国のEU離脱の期限接近、中東の地政学リスクの高まりなど、いずれも市場にネガティブな問題が山積みです。米国の景気が巨額の減税によって嵩上げされた副作用として、2019年会計年度の財政赤字は1兆ドルと歴史的水準に悪化するという悪材料もあります。米国の巨額債務が長期金利の上昇を通して、世界経済全体の重荷となるのは間違いありません。米国株の戻りは2月の暴落後より鈍い可能性が高まっていると見るのが妥当であるように思われます。

おまけに、チャート上は典型的なダブルトップの形になり、以前より調整に入った可能性が高まっていることを教えてくれています。もちろん、私の読みが外れて再び2万6000ドル台に戻してくるようなことがあれば、その時のチャートはトリプルトップの形になり、今以上に調整の可能性が高まっていくことになるでしょう。いずれにしても、2018年~2019年前半までの期間に米国株の天井が確定し、その調整は1年~2年程度続くことを覚悟していく必要があるでしょう。

日経平均も先週の木曜日には1000円近く下げ、金曜日には100円あまり戻したものの、米国株との連動性を考えれば、前回よりは戻りは鈍くなるのは想定することができます。市場関係者のあいだでは、株式市場は徐々に落ち着きを取り戻し、日本株の下げは限定的になるとの見方が多いようです。多くのアナリストは2万2000円を下限とし、2万4000円までは戻ると見ているといいます。私も2万4000円にまで戻す可能性を否定するつもりはありませんが、個人投資家の投資余力が落ちていることを考えると、せいぜい2万4000円手前まで戻すのが限界であると思っております。

というのも、個人投資家は2月の暴落時に追証を回避するための処分売りを急増させたといい、その懐具合は以前よりも厳しくなっていると見られるからです。そのうえ、東証マザーズ指数は2017年に3割ほど上昇したのに対して、2018年は2割ほど下落しています。2017年のPERは50倍程度だったのに対して、2018年は80倍程度、業績が伸び悩むことで割高感が鮮明になっているのです。暴落時に下支え役として機能してきた個人投資家の余力低下は、逃げ遅れたら数年は辛抱になるかもしれない状況にあることを映し出しているのかもしれません。

経済展望レポート(2018年8月30日号)

新興市場、とりわけマザーズ市場が主戦場の個人投資家にとっては、非常に厳しい相場の展開が続いているようです。赤字決算を発表したメリカリやサイバーダインの暴落によって、多くの個人投資家が苦境に陥っているといいます。そこで今回のレポートでは、メルカリやサイバーダインに関する考え方も含めて、(1)日立が東芝の二の舞になるリスク、(2)サイバーダインの業績の行方、(3)中国関連銘柄の投資判断、(4)今後のお宝銘柄は赤字企業から探したい、の4点について述べたいと思います。

まずは(1)の「日立が東芝の二の舞になるリスク」については、早ければ2018年の秋頃に、遅くても2019年には意識されるだろうと見ていたのですが、実際には7月下旬から、そのリスクが意識されるようになってきています。

6月13日のレポートでは、「今後の投資を避けたい大型株」として、日立製作所(6501)、武田薬品工業(4502)、野村ホールディングス(8604)の3銘柄を取り上げました。そのなかで日立に関しては、英国の原発子会社ホライズン・ニュークリアーパワーが担う原発建設の総事業費が3兆円もの巨額であるのに加えて、その事業が経産省の杜撰なスキームのうえに乗ってしまっていることに懸念を感じていると申し上げました。

そのうえで、英国はEUからの離脱を控えているなかで、原発建設に積極的だったメイ政権はその求心力が低下しているため、政権からの援護射撃は受けられない可能性が高まっていることも指摘いたしました。そのような事情から、たとえ今後の業績見通しが好調であったとしても、東芝の二の舞になるリスクも想定したうえで、日立株への投資は控えるべきだろうと警鐘を鳴らさせていただきました。

実のところ、日立の株価は6月13日のレポートを配信した翌日から、じりじりと下落する基調が始まっていましたが、8月に入ってからはその基調が鮮明になってきているようです。日経平均株価の6月13日の終値は22966円、8月30日の終値は22869円と、ほぼ同じ株価水準(0.4%安)を保っているのと比べると、日立の株価は834円から730円へと大幅に下落(12.5%安)しています。日経平均株価がこのところ戻し基調にあったにもかかわらず、8月24日には715円まで下落し、年初来安値を更新していたのです。

株価が下落基調にある背景には、7月下旬に英国の原発子会社ホライズン・ニュークリアーパワーの資産規模が2700億円であることが明らかになり、機関投資家が巨額の減損処理の可能性を意識し始めているということがあります。目下のところ、原発を建設するかどうかをメイ政権と協議している最中であり、その最終判断は2019年になると見られています。仮に建設が決まったとしても、採算コストが跳ね上がる可能性が高まっており、最近では早期に撤退したほうが賢明だという意見が出始めているというのです。

日立はあらゆるモノがインターネットにつながるIOT事業が好調であり、2019年3月期(今期)は経常利益・純利益ともに最高益更新を見込んでいるものの、株式市場がホライズン・ニュークリアーパワーの資産価値がゼロになる可能性を意識するのはやむをえないことでしょう。会社予想では今期の純利益は4000億円と前々期に比べて2倍近くに増えますが、ホライズン・ニュークリアーパワーの資産規模2700億円がゼロになるとすれば、業績への影響が大きいのは避けられないからです。

なぜ機関投資家がそこまで減損リスクを意識するのかというと、昨今の原発建設の多くが事業計画の通りには進まずに、メーカー側が多額の損失計上を迫られるケースが相次いでいるからです。日本のメーカーだけを見ても、東芝は米国の子会社ウェスティングハウスの整理によって、その関連損失が1.4兆円までに膨らみましたし、三菱重工業もトルコでの原発建設費用が計画の2倍に膨らみ、事業の遂行が危ぶまれているのです。

日立の総資産は10兆1000億円と巨額であり、ホライズン・ニュークリアーパワーの資産2700億円は全体の3%にも満たないので、仮に全損処理になったとしても、東芝のように経営危機の陥るリスクはまったくありません。しかしそれでも、原発事業では東芝の二の舞になるリスクも想定したうえで、日立株への投資には慎重な姿勢を継続したいと考えております。

正直なところ、日立の原発事業リスクが意識される時期は想定よりも早かったのですが、仮に2019年に英国の原発事業が中止になったり、ホライズン・ニュークリアーパワーが整理されたりするようなことがあれば、その時に日立の株価は暴落する可能性が高いので、その時こそが日立の絶好な買い場になるのではないかと予想しております。

ちなみに、日立といっしょに取り上げた野村の株価は、同じ期間のあいだに573円から514円へと下落(10.3%安)しています。8月16日には492円まで下げ年初来安値を更新していました。その一方で、武田薬品は4367円から4600円まで上昇(5.3%高)していますが、いずれの銘柄でも6月13日のレポートに書いた内容は、これから顕在化してくることと考えております。

次に(2)の「サイバーダインの業績の行方」については、今週になって仕事でずっと付き合いがある経済誌の編集者から、「サイバーダインを長いあいだ持っている」と打ち明けられました。

もっと早く教えてもらえればと悔やんだのは、ずいぶん前に(おそらく、4年~5年くらい前だったと思いますが)あるレポートのなかで、サイバーダイン(7779)について1回だけ取り上げたことがあったからです。その時にサイバーダインについて書いたのは、サウジアラビアの投資家から同社株への投資の可否も含めて相談されたことがきっかけとなっていました。

当時の書いた内容を要約すれば、「サイバーダインは5年経っても10年経っても黒字化する可能性は低いだろう」というものです。その理由は極めて単純で、ロボットスーツHALは経済合理性にまったく合っていない製品だったからです。介護の現場がHALに求めるニーズとHALを導入するコストのあいだには、あまりにも大きな乖離が存在していたのです。

同社のHALを10年以上も前に初めて見た時から、私の考えは今でもほとんど変わっていません。その当時からサイバーダインへの地元の期待は非常に高かったので、各方面の方々から意見を求められることが多かったのですが、私は意見を求められるたびに「ビジネスとしては黒字化するのは難しいと思いますよ」と、棘がないように控えめに答えていました。

今になって「サイバーダインの今後の業績はどうなると思うか」と聞かれれば、「5年経っても10年経っても黒字化する可能性は低いだろう」と、10年前あるいは5年前と同じ見通しを述べることしかできない状況にあります。当然のことながら、飛躍的な技術革新があってHALのコストが大幅に下がれば、黒字化するビジネスに変容する可能性は十分にありますが、今のところそのような兆候は見られません。

私はこれまで内々で聞かれた時を除いて、マネー誌や取材などでサイバーダインについて公にコメントしたことはありません。というのも、・・・・(以下、省略)

経済展望レポート(2018年2月12日号)

米国株が暴落をしました。2月5日にNYダウ平均の下げ幅は1175ドル(下落率は4.6%)と過去最高となったのに続き、2月8日には下げ幅は1032ドル(下落率は4.1%)と過去2番目になったのですから、株価が落ち着くまでには多少の期間が必要となるのはいたしかたないでしょう。

昨年の10月号から今年の1月号にかけて、米国株がかなり割高になっている(ミニ・バブルの状況にある)としたうえで、大幅な調整をする可能性が高いということを、再三にわたって述べさせていただきました。そこで今回のレポートでは、今後の教訓として押さえておくべき要点を整理したうえで、今後の対応方法について簡潔に述べておきたいと思います。

今後の教訓として押さえておくべき要点は、主に以下の5点になります。(これまでのレポートでも述べてきたことですが、再度、整理してまとめています。)

(1)ここ10年あまりの日経平均を主導しているのは、短期の投機筋や長期の投資家が入り混じっている現物の売買ではなくて、短期の投機筋が主体となっている先物の売買やそれに伴う値動きです。そういった意味では、一方向への買いや売りを継続して値幅を取りに行く投機的なファンドの動向は、相場の方向性を決定づけるうえでは非常に重要になっています。先物が主導している市場では、たった1日の急変動によって相場に変調の兆しが表れるということを、私たちはよく肝に銘じておくべきです。

(2)世界の株式の時価総額は90兆ドル近くに達していて、世界のGDPを大幅に上回ってきています。時価総額とGDPを比較するバフェット指標によれば、株価は2017年の春先以降、割高とされる水準で推移し続けていました。また、エール大学のシラー教授が考案した長期的な株価水準を示す指標によれば、2018年1月末時点のNYダウ平均のPERは33倍に達し、すでに2007年の住宅バブル時の水準を上回り、2000年のITバブル時の水準にも肉薄していました。

(3)1987年のブラック・マンデー、1997年のアジア通貨危機、2007年のサブプライム危機(あるいは2008年のリーマン・ショック)と、これまでの危機は10年程度に1度は起きています。バブルの崩壊後に中央銀行の金融緩和を経て、新たなバブルが生まれ、また崩壊に向かう。私たちは今もその繰り返しの過程にいるということを、決して軽視してはいけないでしょう。私もリーマン・ショックのような危機が起こるとは思っていませんが、ブラック・マンデー程度の危機は2018年~2019年に起こってもおかしくはないと考えているからです。

(4)日本株は先進各国と比べて割安であり、予想PERで計算すれば3万円を付けてもおかしくないという意見が2017年末あたりから勢いを増していましたが、日本株はPERよりも米国株との連動性のほうが強いので、米国株が割高な状態のまま3万円を目指すことはありえません。2018年にNYダウ平均が大幅な調整をするという仮定に立てば、それに引き寄せられるように日経平均も売られるという見方のほうが妥当なように思われます。

(5)NYダウ平均が26000ドルにまで達してしまっては、割高という水準というよりは、プチバブルの水準に入ってきたといってよいのかもしれません。米国株が上がれば上がるほど、上昇ピッチが速ければ速いほど、その反動が大きいことを意識せざるをえません。ウォール街の投資家の多くは音楽が鳴り止むまで踊り続けるつもりであり、音楽が鳴り止んだ途端に舞台から降りる準備もできているといいます。そのような話を聞いていると、相場の潮目が変わった途端にパニック的な売りが出るのではないかと心配になっています。

次に、今後の対応方法については、以下の3点に留意したいと考えています。

(1)株価がさらなる暴落へと続くのか、あるいは反転してくるのか、そのカギを大きく握るのは、・・・・(以下、省略)

経済展望レポート(2017年11月14日号)

先週末、ある週刊誌の取材を受けた時に、「マネックス証券の松本大さんは、日経平均が3万円まで上がるという話をされていますが、中原さんはどのようにお考えになるでしょうか」という質問を受けました。週刊誌の記者によれば、松本さんはその根拠として、「最近の日経平均の大幅な上昇は、日本がいよいよデフレから脱却し、インフレになるということを意味している」「インフレの時代には、日経平均の採用銘柄の新陳代謝も進み、日本株は米国株並みに買われる存在になる」といった事柄を挙げているということです。

この質問に対する私の回答は、「そのようになるわけがない」というものですが、主に次に申し上げる4点に要約できると思います。まず1点目として指摘したいのは、証券会社の会長・社長といった役職にある方々は、決して株価の見通しを悲観的に述べることはないということです。本人が本当はどう思っていようとも、手数料の減少に直結するような見解は言わないという不文律があるのです。ですから、株価が下がっている時には「将来的には上がる」という楽観的な見通しを述べますし、株価が大幅に上昇している時には、「もっと上がる」と強気な見通しを立てる傾向が強いわけです。

次に2点目として指摘したいのは、日本はこれから少子高齢化が加速し、労働力人口が減少の一途を辿る一方で、年金受給者が増え続けていくということです。この事実は、国民一人あたりの平均所得(可処分所得)が徐々に減っていくということを意味しています。30年~50年のスパンで見れば、年金額が300兆円~500兆円の積み立て不足に陥っているなかで、将来的には受給額の引き下げ圧力が高まっていくのは不可避な情勢です。年金受給者が増え続けるなかで、国民はインフレを決して望まないでしょうし、そもそも労働者が減り続ける状況下では、いくら経済金融政策で取り繕ってもインフレになるわけがないのです。

3点目として指摘したいのは、最近の日経平均の急ピッチな上昇は海外投資家の買い越し額の急増によるもので、このような買い越しは長続きしないだろうということです。前号でも述べましたように、海外投資家が日本株を買ったのは、米国株の上昇幅・上昇率と比べて、日本株に相対的な割安感が高まったという要因があります。過去1年間でNYダウ平均は30%程度、S&P500種は20%超の上昇をしていますが、今後も米国株が同じようなペースで上昇しないかぎり、・・・・(以下、省略)


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