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レポートの実例

経済展望レポート(2018年12月10日号)

本年の最後を締め括ることとなる今回のレポートでは、(1)米長期金利が再び2%台へ、(2)長短金利の逆転、(3)OPECの先行き、(4)米中の妥協はあるのか、(5)中国経済の苦境は続く、(6)2019年は円高の年、(7)セオリーが通用しない日本株、(8)10倍株は結果論、(9)相場勘の話(続編)、の9点について簡潔に述べたいと思います。

まず(1)の「米長期金利が再び2%台へ」については、パウエルFRB議長が10月初旬のFOMC後に、政策金利は「中立金利には距離がある」と発言したのに対して、・・・(以下、中略)

続いて(6)の「2019年は円高の年」については、11月のFOMC以降、米国の利上げが想定以上に早く終わるとの観測が広がっていることと深く関係があります。従来のFRBの利上げのシナリオでは、2018年にもう1回、2019年に3回、2020年に1回という内容でしたので、現在の政策金利の年2.00~2.25%は将来的には3.25~3.50%まで引き上げられるという見通しでした。ところが、FOMCの議事要旨に基づけば、多くの市場関係者が2019年中にも利上げが打ち止めになる可能性が高まってきていると見ているのです。

先ほど、「過去の経験則は少しだけ参考程度にするくらいの姿勢でいい」と述べましたが、FRBの利上げが終了し、利下げが始まるまでの局面においては、円高・ドル安の傾向が徐々に強まっていくという経験則があります。大きな流れに従えば、この経験則は信用できると思います。そのうえ、FRBが利下げに転換する局面では、日銀は円高を防ぐ手段をほぼ使い果たしてしまっているので、さしたる抵抗感もなく円高が進みやすいという状況は押さえておかねければなりません。ここから2年~3年のスパンで見れば、海外の投資家が投機的な円買いを進めてくる環境は整いつつあるように思われます。

さらには、貿易に関する調査を担当する米政府機関である米国際貿易委員会が12月6日に開いた公聴会では、自動車産業の労働組合が日本に対し通貨安誘導を禁止する為替条項の導入を求めています。同委員会は2019年1月を目途に報告書をまとめ、米通商代表部(USTR)に提出しますが、来年の1月に始まる日米のFTA交渉(日本政府はTAGと言っていますが)では、為替条項の是非が大きな議題になってくる可能性が高まってきています。日本の投資家は海外の投資家以上に、米国の利上げの終了が早まることをネガティブに捉える必要があるのではないでしょうか。

次に(7)の「セオリーが通用しない日本株」についてですが、(6)との関連において、過去の経験則を振り返ってみると、米国の利上げの終了から利下げの開始までの時期は、米国の株価が天井を付けるタイミングとほぼ重なってきたといえます。そういった意味では、利上げの終了が早まることは、むしろ米国株にとって調整入りの兆しと捉えたほうが適当であるでしょう。大きな流れでいえば、(6)と場合と同じように、この経験則は信用できると思います。もちろん、米国株との連動性が強い日本株にも同じ傾向が見られるので、日米双方の株価はすでにピークを打ったと考えて問題ないでしょう。

過去5年間で10-12月に海外投資家が大幅に買い越す傾向が続いていたことから、市場関係者のあいだでも11月上旬までは年末ラリーへの期待が大きかったのですが、海外投資家は11月第4週も2101億円を売り越し、10月以降の売り越しが5500億円超にまで拡大しています。先週あたりからは、海外でも中長期の投資家が大型株を中心に売ってきているため、10-12月は売り越しのままで終わる可能性が高まってきているのです。海外の株式ファンドの年初からの運用成績はマイナスとなっており、資金流出に備えた現金化はまだ続くと見たほうが無難でしょう。いずれにしても、来年以降の日本株は、通用しそうなセオリーと通用しないセオリーを吟味しながら、柔軟に対応していく必要がありそうです。

次に(8)の「10倍株は結果論」については、毎年、秋口から年末に向けての時期に、マネー誌などから「10倍株を推奨してほしい」という依頼を受けることがあります。しかし、経済構造やビジネスモデルが目まぐるしく変わっている現在において、10倍に化ける銘柄などわかるはずがありません。10倍株は見つけようとして探せるわけではなく、10倍になったのは結果論にすぎないというのが、私の考え方です。

そういった意味では、人生に一度でも10倍株を経験できれば大きな幸運に巡り合ったと思うことができるし、そもそも10倍になるまで持ち続けることが難しいのではないかと思ってしまいます。仮に10倍まで持ち続けることができた個人投資家がいたとしたら、その成功体験から抜け出すのは容易ではないでしょう。大成功の後は、売るタイミングがわからなくなってしまうかもしれません。10倍株を連発しているなどという話には、決して近づいてはいけません。

最後に(9)の「相場勘の話(続編)」について、勘は危険を察知するのに適していると思われます。実は、この勘が2017年末と同じくらい肌感覚でわかっていたのは、2006年末~2007年にかけてです。11月13日号で取り上げた「基本的な投資スタンスの確認」において、なぜ2007年~2013年をボックストレンドと下降トレンドの期間にしていたのかというと、2007年~2010年は激しい下降トレンドが来た後で、2011年~2013年はボックス相場になるだろうと考えていたからでした。

投資スタンスのベースとなっている書籍が出版された2007年6月当時は、経済メディアでは「過去数十年で世界経済が最も好調な時期」と囃され、株式市場では「株価はあと数年上がり続けるだろう」といわれていました。しかし実際には、2007年8月にパリバ・ショック、2008年9月にリーマン・ショックが起こってしまいました。相場勘と合理的な解釈が合致したからこそ、そのような判断ができたわけですが、投資でもっとも重要なのは、暴落によって大怪我を負わないということです。ひとたび大怪我を負うことになれば、元の状態に回復するまでに数年の期間を要するかもしれませんし、場合によっては再起不能に追い込まれてしまうかもしれないからです。

これに対して、近年で失敗だったと思うのは、トランプ大統領の誕生とその後の彼の政策の方向性がまったく読めなかったということです。合理的に考えれば考えるほど彼の考えはわからなかったばかりか、相場勘も思うように働かなかったからです。理解不能な大統領には、私もすっかりお手上げというしかありませんでした。しかし、その甲斐があって、2019年以降の展開は却って読みやすくなっていると思います。

年内のレポートは、この12月10日号を以って最後とさせていただきます。みなさんにおかれましては、現金を100%にしているでしょうから、枕を高くして安心して年末年始をお過ごしくだされば幸いです。

経済展望レポート(2018年11月13日号)

注目されていた米国の中間選挙では、上院で共和党、下院で民主党が過半数を獲得しました。そこで今回のレポートでは、(1)中間選挙の結果で変わったこと・変わらなかったこと、(2)EUが機能不全に陥る予兆、(3)米国株はダブルトップを形成、(4)リバウンド相場の対処法、(5)基本的な投資スタンスの確認、の5点について述べたいと思います。

まず(1)の「中間選挙の結果で変わったこと・変わらなかったこと」については、世界経済にとって中間選挙は好ましい結果になったと考えています。10月25日号でも述べたように、上下両院で共和党が勝利するようなことがあれば、追加減税の第2弾によって財政赤字がいっそう拡大し、・・・(以下、中略)

次に(3)の「米国株はダブルトップを形成」についてですが、S&P500種株価指数の2013年以降の上昇分のうち、実にその4割弱はアップル、アマゾン、アルファベット、フェイスブック、マイクロソフト、ネットフリックスの6社がもたらしたものです。世界的に経済成長率の低下が指摘されているなかで、これら6社は新しいビジネスモデルのプラットフォーマーとして投資家の資金を過剰に集めることができたのです。

しかしながら10月以降、アマゾンやアルファベットなどが発表した2018年7-9月期決算で増益率が市場の期待を下回ると、これらの成長株は大きく下落することとなりました。ヘッジファンドは負債をテコにしてこれら6社に資金を集中させることで市場平均を上回るリターンを得てきましたが、10月の運用成績はマイナス6%に接近するまでに落ち込み、2008年のリーマン・ショックに次ぐマイナス幅を記録しています。

いよいよ米国株の上昇基調を支えてきた成長株への資金集中は、大きな転換点を迎えたといっても過言ではないでしょう。今後は成長株に投資するファンドの解約が増えてくることも予想されます。これらのプラットフォーマーが最高値を更新し続けるような相場に戻るのは困難だろうという見解が、ウォール街では今や主流になりつつあるようです。実際に、成長期待からPERが相対的に高かった銘柄ほど下落幅が大きくなっているのです。

10月14日号でも申し上げたように、NYダウとS&P500の双方のチャートがダブルトップの形になり、以前より調整に入った可能性が高まっていることを知らせてくれています(NYダウについては、直近の戻しでトリプルトップといえないこともないですが、日柄的にはダブルトップと見るのが妥当でしょう)。このままの年末に向けて米国株がさらに下落するようなことがあれば、米国株は本格的な調整期間に入るだろうと意識していく必要があるでしょう。

続いて(4)の「リバウンド相場の対処法」についてですが、10月25日号の最後のほうでは、「いずれにしても、十分にリスク管理ができていれば、本日のように目が覚めて米国株が大幅に下げていても何ら動じることはありませんし、2万1000円くらいまで下がれば年内はもうワンチャンスあるという積極的な考えを持つこともできます」と申し上げました。

実際のところ、その後の日経平均は4営業日ほど2万1000円前後で推移し、10月26日には2万1000円を下回る局面もありました。きっとワンチャンスをものにした方もいることでしょうし、利益確定に関しては2万2000円でも2万2500円でも2万3000円でも個人の判断に委ねたいと思っております(すでに2万2000円超で利益確定をした方もいるとは思いますが)。

昨晩の米国株の暴落によって年内に2万3000円に戻ることはさすがになくなったように感じていますが、いずれにしても年内にポジションを整理して、来年の相場に備えることが肝要であります。今年の相場を総括すると、今回の2万1000円からのリバウンド相場も含め、逃げ切る癖を付ける練習となるいくつかの局面を提供してくれたと考えております。そこで問題意識を持って経験値を積むことは、とても重要なことであるといえると思います。

最後に(5)の「基本的な投資スタンスの確認」についてです。私の基本的な投資スタンスについては、2007年に出版した『株式市場「強者」の論理』という本のなかの「長期的な計画を立てる」という項目のなかで、その原型ともいえる文章を書いております。あれから10年あまりを経て、その文章を改めて紹介したいと思います。

【以下、『株式市場「強者」の論理』218~220ページより転載】

あと20年以内に大きな上昇トレンドを2回経験できれば、資産を数十倍にできるチャンスは十分あります。それまでは、焦らず、少しずつ増やしていくことなど、心の余裕が求められます。仮に次のようなトレンドをシミュレーションしてみましょう。

2007年~2013年(7年間) ボックストレンドまたは下降トレンド
2014年~2016年(3年間) 上昇トレンド
2017年~2023年(7年間) ボックストレンドまたは下降トレンド
2024年~2026年(3年間) 上昇トレンド

ボックストレンドまたは下降トレンドでは、できるだけ安全な投資を心がけなければなりません。具体的には年率10%の利益で満足しなければなりません。それでも年率10%の複利で増やしていけば、7年目の2013年に資金は約2倍(1.95倍)になります。

そして、2014年から始まる上昇トレンドにおいて年率50%で複利で増やしていくとしましょう。10年目の2016年には元本の6.58倍にまで増えている計算になります。さらに、この仮定で計算を進めると、2007年から2026年までの20年間で投資資金は43.3倍に膨らみます。

よりリスクを軽減し、安定的なリターンを求めるのであれば、ボックストレンドまたは下降トレンドでは株式の代わりに外貨や外債で5%程度の利回りを目安に運用し、上昇トレンドのときだけ株式で30%のパフォーマンスを目安に運用するという方法もあります。なるべくリスクを避けたいという投資家向けの方法です。

このシミュレーションは決して楽観的なシミュレーションではありません。過去のトレンドなども加味して中立的な立場で想定したものです。1年、2年といった短期間で数十倍に資産を増やそうとせずとも、長期的・継続的に資産を増やすことができれば十倍、数十倍という目標も夢ではないでしょう。

【以上、転載終わり】

さて、この文章から10年あまり経っていますが、少なくとも過去5年間の私は、基本的にどのような投資スタンスを提唱してきたのかというと(実際に、それで上手く機能していると思っております)、上記の文章から少しアレンジして以下のようなものになります。(両者の比較がしやすいように、上記の文章をできるだけ再現しながら表しています。)

【以下、実際の投資スタイル】

あと20年以内に大きな上昇トレンドを2回経験できれば、資産を10倍にできるチャンスは十分あります。それまでは、焦らず、少しずつ増やしていくことなど、心の余裕が求められます。仮に次のようなトレンドをシミュレーションしてみましょう。

2007年~2013年(7年間) ボックストレンドまたは下降トレンド
2014年~2016年(3年間) 上昇トレンド
2017年~2023年(7年間) ボックストレンドまたは下降トレンド
2024年~2026年(3年間) 上昇トレンド

ボックストレンドまたは下降トレンドでは、できるだけ安全な投資を心がけなければなりません。具体的には株式で年率5%の利益で満足しなければなりません。それでも年率5%の複利で増やしていけば、7年目の2013年に資金は1.4倍になります。

そして、2014年から始まる上昇トレンドにおいて年率30%で増やしていくとしましょう。10年目の2016年には元本の3.1倍にまで増えている計算になります。さらに、この仮定で計算を進めると、2007年から2026年までの20年間で投資資金は9.6倍に膨らみます。

このシミュレーションは決して楽観的なシミュレーションではありません。過去のトレンドなども加味して中立的な立場で想定したものです。1年、2年といった短期間で十倍に資産を増やそうとせずとも、長期的・継続的に資産を増やすことができれば10倍という目標は現実的に達成が可能です。

なるべくリスクを避けたいという投資家向けの合理的な方法、かつ実際に実践したうえで控えめな目標に設定した方法であると思っています。(実際には、これ以上のパフォーマンスは優に達成できています。)

【以上、実際の投資スタイル終わり】

それに加えて、私がこれまで経済展望レポートで繰り返し申し上げてきたのは、世界の政治・経済のリスクを考慮に入れながら、投資のリスクをコントロールするということです。リスクをコントロールするには様々な方法がありますが、私が考える簡単なリスク・コントロールの方法は、想定するトレンド(地合い)に応じて、運用ポジションの比率を柔軟に変えていくということです。

実際のところ、景気拡大期と金融緩和の双方が続く局面では、「暴落時に買い、上昇時に欲張らずに売る」のが基本としてきました。次に、景気拡大期と金融引締めが進む初期の局面では、同じ対応となりますが、「ポジションは控えめに(たとえば、3分の1あたりに)する」のが肝要であるとしてきました。そして次にやってくる、金融引締めと景気後退が相次ぐ局面では、「ノーポジション(現金比率は100%)で余裕を持って待つ」のが賢明であるとしています。

ですから、積極的な投資によって利益の最大化をできたのは2013年~2015年までであり、2016年以降は利益の追求に固執せず、年率5~10%程度でも十分な利益として満足すべきだというスタンスを貫いております。その結果として、2013年~2015年(厳密には2015年前半まで)の運用ポジションを100とすれば、2016年(厳密には2015年後半)以降は30で運用する必要性を強調し、買うのは相場が暴落した時のみに限定してきました。

私の現時点のシナリオでは、2013年~2015年前半が強気な運用期間(ポジション100)、2015年後半~2019年前半が慎重な運用期間(ポジション30)、2019年後半~2021年前半が買い場を探る運用期間(ポジション0→50→100と段階的に増やしていく)となります。ただし、世界経済や市場のリスクを随時点検し、柔軟に対応していく必要があるので、慎重な運用期間から買い場を探る運用期間への移行は多少前後することもありえますし、次号で述べる予定の「相場勘」によっては戦略自体が大きく変わることもありえます。

経済展望レポート(2018年10月14日号)

先週は米国株が暴落し、日本株も大幅な下落に見舞われました。そこで今回のレポートでは、(1)米国の長期金利上昇の衝撃、(2)株式市場の暴落に動じない姿勢、(3)日銀が出口に進めない状況へ、(4)逃げ切る癖をつける、(5)米国株は長い調整に入ったのか、の5点について述べたいと思います。

はじめに(1)の「米国の長期金利上昇の衝撃」については、米国の長期金利が9月下旬からの上昇によって、これまで壁として跳ね返されてきた3%のラインを突破してきました。その後は3%の壁を明確に突き抜けて3.2%台まで上昇し、・・・(以下、中略)

続いて(4)の「逃げ切る癖をつける」についてですが、株式市場で長生きする秘訣があるとすれば、まさに「逃げ切る癖」は重要であると考えております。自らの投資戦略と現実の相場のあいだに少しでもズレが生じてきたと思ったら、迅速に戦略を修正しリスクを低下させることが欠かせない行動パターンであると、常々実感しているからです。いかに小幅な利益でも利食いができるか、いかに小さい損失で逃げることができるか、といった具体的な事例は8月~9月のレポートでも実証されています。

たとえば、安川電機のケースでは、私は中国の景気刺激策の効果が7月には表れてくるだろうと考えておりましたが、実際に中国の経済指標が7月も軒並み減速の傾向を抜け出していないのを見て、戦略を迅速に修正し逃げることを優先させました。現に、中国の経済指標の鈍化は8月も続き、9月にはついに新車販売台数が11%減となり、今年の新車販売台数は前年割れになるという見通しが述べられるようにまでなってきています。月に2回のレポートなので、本当の意味では迅速とはいえないかもしれませんが、それでも良いタイミングで逃げることをアドバイスできたと思っております。

同じようにメルカリについても、良いタイミングで利益確定するタイミングを示すことができたと思っております。レポートでも述べましたように、ちょっと戻すペースが速すぎると思ったので、欲張らずに利食いをするのが無難であると判断いたしました。とりあえず現金化をしておいて、次に備えるという考え方がぴったりとはまったケースでありました。かねてから2018年は難しい相場になることがわかっていたので、決して欲張る必要はなかったというわけです。はっきりとした答えがないに等しい投資の世界では、状況に応じて柔軟に戦略を修正しながら、利益を最大化させるよりも、損失を最小化させるほうが優先されるべき考え方です。

最後に(5)の「米国株は長い調整に入ったのか」についてですが、NYダウ平均は先週だけで1107ドル下げました。正直申し上げて、今年2月の暴落を冷静に見ていたせいか、先週の下げ幅が史上5番目だといわれてもあまり驚きませんでした。足元の株価暴落によって、米国株のPERは15倍台後半と2016年2月以来の水準に下落していますが、2月の暴落後のような戻り相場が期待できるのかというと、私は難しいのではないかと見ております。割高感が薄れてきたとはいっても、それが景気後退を意識しているものであれば話は変わってくるからです。

今年の年初とは異なり、今後の世界経済は米中貿易戦争をはじめ、イタリア財政問題の蒸し返し、新興国の資金流出への懸念、英国のEU離脱の期限接近、中東の地政学リスクの高まりなど、いずれも市場にネガティブな問題が山積みです。米国の景気が巨額の減税によって嵩上げされた副作用として、2019年会計年度の財政赤字は1兆ドルと歴史的水準に悪化するという悪材料もあります。米国の巨額債務が長期金利の上昇を通して、世界経済全体の重荷となるのは間違いありません。米国株の戻りは2月の暴落後より鈍い可能性が高まっていると見るのが妥当であるように思われます。

おまけに、チャート上は典型的なダブルトップの形になり、以前より調整に入った可能性が高まっていることを教えてくれています。もちろん、私の読みが外れて再び2万6000ドル台に戻してくるようなことがあれば、その時のチャートはトリプルトップの形になり、今以上に調整の可能性が高まっていくことになるでしょう。いずれにしても、2018年~2019年前半までの期間に米国株の天井が確定し、その調整は1年~2年程度続くことを覚悟していく必要があるでしょう。

日経平均も先週の木曜日には1000円近く下げ、金曜日には100円あまり戻したものの、米国株との連動性を考えれば、前回よりは戻りは鈍くなるのは想定することができます。市場関係者のあいだでは、株式市場は徐々に落ち着きを取り戻し、日本株の下げは限定的になるとの見方が多いようです。多くのアナリストは2万2000円を下限とし、2万4000円までは戻ると見ているといいます。私も2万4000円にまで戻す可能性を否定するつもりはありませんが、個人投資家の投資余力が落ちていることを考えると、せいぜい2万4000円手前まで戻すのが限界であると思っております。

というのも、個人投資家は2月の暴落時に追証を回避するための処分売りを急増させたといい、その懐具合は以前よりも厳しくなっていると見られるからです。そのうえ、東証マザーズ指数は2017年に3割ほど上昇したのに対して、2018年は2割ほど下落しています。2017年のPERは50倍程度だったのに対して、2018年は80倍程度、業績が伸び悩むことで割高感が鮮明になっているのです。暴落時に下支え役として機能してきた個人投資家の余力低下は、逃げ遅れたら数年は辛抱になるかもしれない状況にあることを映し出しているのかもしれません。

経済展望レポート(2018年8月30日号)

新興市場、とりわけマザーズ市場が主戦場の個人投資家にとっては、非常に厳しい相場の展開が続いているようです。赤字決算を発表したメリカリやサイバーダインの暴落によって、多くの個人投資家が苦境に陥っているといいます。そこで今回のレポートでは、メルカリやサイバーダインに関する考え方も含めて、(1)日立が東芝の二の舞になるリスク、(2)サイバーダインの業績の行方、(3)中国関連銘柄の投資判断、(4)今後のお宝銘柄は赤字企業から探したい、の4点について述べたいと思います。

まずは(1)の「日立が東芝の二の舞になるリスク」については、早ければ2018年の秋頃に、遅くても2019年には意識されるだろうと見ていたのですが、実際には7月下旬から、そのリスクが意識されるようになってきています。

6月13日のレポートでは、「今後の投資を避けたい大型株」として、日立製作所(6501)、武田薬品工業(4502)、野村ホールディングス(8604)の3銘柄を取り上げました。そのなかで日立に関しては、英国の原発子会社ホライズン・ニュークリアーパワーが担う原発建設の総事業費が3兆円もの巨額であるのに加えて、その事業が経産省の杜撰なスキームのうえに乗ってしまっていることに懸念を感じていると申し上げました。

そのうえで、英国はEUからの離脱を控えているなかで、原発建設に積極的だったメイ政権はその求心力が低下しているため、政権からの援護射撃は受けられない可能性が高まっていることも指摘いたしました。そのような事情から、たとえ今後の業績見通しが好調であったとしても、東芝の二の舞になるリスクも想定したうえで、日立株への投資は控えるべきだろうと警鐘を鳴らさせていただきました。

実のところ、日立の株価は6月13日のレポートを配信した翌日から、じりじりと下落する基調が始まっていましたが、8月に入ってからはその基調が鮮明になってきているようです。日経平均株価の6月13日の終値は22966円、8月30日の終値は22869円と、ほぼ同じ株価水準(0.4%安)を保っているのと比べると、日立の株価は834円から730円へと大幅に下落(12.5%安)しています。日経平均株価がこのところ戻し基調にあったにもかかわらず、8月24日には715円まで下落し、年初来安値を更新していたのです。

株価が下落基調にある背景には、7月下旬に英国の原発子会社ホライズン・ニュークリアーパワーの資産規模が2700億円であることが明らかになり、機関投資家が巨額の減損処理の可能性を意識し始めているということがあります。目下のところ、原発を建設するかどうかをメイ政権と協議している最中であり、その最終判断は2019年になると見られています。仮に建設が決まったとしても、採算コストが跳ね上がる可能性が高まっており、最近では早期に撤退したほうが賢明だという意見が出始めているというのです。

日立はあらゆるモノがインターネットにつながるIOT事業が好調であり、2019年3月期(今期)は経常利益・純利益ともに最高益更新を見込んでいるものの、株式市場がホライズン・ニュークリアーパワーの資産価値がゼロになる可能性を意識するのはやむをえないことでしょう。会社予想では今期の純利益は4000億円と前々期に比べて2倍近くに増えますが、ホライズン・ニュークリアーパワーの資産規模2700億円がゼロになるとすれば、業績への影響が大きいのは避けられないからです。

なぜ機関投資家がそこまで減損リスクを意識するのかというと、昨今の原発建設の多くが事業計画の通りには進まずに、メーカー側が多額の損失計上を迫られるケースが相次いでいるからです。日本のメーカーだけを見ても、東芝は米国の子会社ウェスティングハウスの整理によって、その関連損失が1.4兆円までに膨らみましたし、三菱重工業もトルコでの原発建設費用が計画の2倍に膨らみ、事業の遂行が危ぶまれているのです。

日立の総資産は10兆1000億円と巨額であり、ホライズン・ニュークリアーパワーの資産2700億円は全体の3%にも満たないので、仮に全損処理になったとしても、東芝のように経営危機の陥るリスクはまったくありません。しかしそれでも、原発事業では東芝の二の舞になるリスクも想定したうえで、日立株への投資には慎重な姿勢を継続したいと考えております。

正直なところ、日立の原発事業リスクが意識される時期は想定よりも早かったのですが、仮に2019年に英国の原発事業が中止になったり、ホライズン・ニュークリアーパワーが整理されたりするようなことがあれば、その時に日立の株価は暴落する可能性が高いので、その時こそが日立の絶好な買い場になるのではないかと予想しております。

ちなみに、日立といっしょに取り上げた野村の株価は、同じ期間のあいだに573円から514円へと下落(10.3%安)しています。8月16日には492円まで下げ年初来安値を更新していました。その一方で、武田薬品は4367円から4600円まで上昇(5.3%高)していますが、いずれの銘柄でも6月13日のレポートに書いた内容は、これから顕在化してくることと考えております。

次に(2)の「サイバーダインの業績の行方」については、今週になって仕事でずっと付き合いがある経済誌の編集者から、「サイバーダインを長いあいだ持っている」と打ち明けられました。

もっと早く教えてもらえればと悔やんだのは、ずいぶん前に(おそらく、4年~5年くらい前だったと思いますが)あるレポートのなかで、サイバーダイン(7779)について1回だけ取り上げたことがあったからです。その時にサイバーダインについて書いたのは、サウジアラビアの投資家から同社株への投資の可否も含めて相談されたことがきっかけとなっていました。

当時の書いた内容を要約すれば、「サイバーダインは5年経っても10年経っても黒字化する可能性は低いだろう」というものです。その理由は極めて単純で、ロボットスーツHALは経済合理性にまったく合っていない製品だったからです。介護の現場がHALに求めるニーズとHALを導入するコストのあいだには、あまりにも大きな乖離が存在していたのです。

同社のHALを10年以上も前に初めて見た時から、私の考えは今でもほとんど変わっていません。その当時からサイバーダインへの地元の期待は非常に高かったので、各方面の方々から意見を求められることが多かったのですが、私は意見を求められるたびに「ビジネスとしては黒字化するのは難しいと思いますよ」と、棘がないように控えめに答えていました。

今になって「サイバーダインの今後の業績はどうなると思うか」と聞かれれば、「5年経っても10年経っても黒字化する可能性は低いだろう」と、10年前あるいは5年前と同じ見通しを述べることしかできない状況にあります。当然のことながら、飛躍的な技術革新があってHALのコストが大幅に下がれば、黒字化するビジネスに変容する可能性は十分にありますが、今のところそのような兆候は見られません。

私はこれまで内々で聞かれた時を除いて、マネー誌や取材などでサイバーダインについて公にコメントしたことはありません。というのも、・・・・(以下、省略)

経済展望レポート(2018年2月12日号)

米国株が暴落をしました。2月5日にNYダウ平均の下げ幅は1175ドル(下落率は4.6%)と過去最高となったのに続き、2月8日には下げ幅は1032ドル(下落率は4.1%)と過去2番目になったのですから、株価が落ち着くまでには多少の期間が必要となるのはいたしかたないでしょう。

昨年の10月号から今年の1月号にかけて、米国株がかなり割高になっている(ミニ・バブルの状況にある)としたうえで、大幅な調整をする可能性が高いということを、再三にわたって述べさせていただきました。そこで今回のレポートでは、今後の教訓として押さえておくべき要点を整理したうえで、今後の対応方法について簡潔に述べておきたいと思います。

今後の教訓として押さえておくべき要点は、主に以下の5点になります。(これまでのレポートでも述べてきたことですが、再度、整理してまとめています。)

(1)ここ10年あまりの日経平均を主導しているのは、短期の投機筋や長期の投資家が入り混じっている現物の売買ではなくて、短期の投機筋が主体となっている先物の売買やそれに伴う値動きです。そういった意味では、一方向への買いや売りを継続して値幅を取りに行く投機的なファンドの動向は、相場の方向性を決定づけるうえでは非常に重要になっています。先物が主導している市場では、たった1日の急変動によって相場に変調の兆しが表れるということを、私たちはよく肝に銘じておくべきです。

(2)世界の株式の時価総額は90兆ドル近くに達していて、世界のGDPを大幅に上回ってきています。時価総額とGDPを比較するバフェット指標によれば、株価は2017年の春先以降、割高とされる水準で推移し続けていました。また、エール大学のシラー教授が考案した長期的な株価水準を示す指標によれば、2018年1月末時点のNYダウ平均のPERは33倍に達し、すでに2007年の住宅バブル時の水準を上回り、2000年のITバブル時の水準にも肉薄していました。

(3)1987年のブラック・マンデー、1997年のアジア通貨危機、2007年のサブプライム危機(あるいは2008年のリーマン・ショック)と、これまでの危機は10年程度に1度は起きています。バブルの崩壊後に中央銀行の金融緩和を経て、新たなバブルが生まれ、また崩壊に向かう。私たちは今もその繰り返しの過程にいるということを、決して軽視してはいけないでしょう。私もリーマン・ショックのような危機が起こるとは思っていませんが、ブラック・マンデー程度の危機は2018年~2019年に起こってもおかしくはないと考えているからです。

(4)日本株は先進各国と比べて割安であり、予想PERで計算すれば3万円を付けてもおかしくないという意見が2017年末あたりから勢いを増していましたが、日本株はPERよりも米国株との連動性のほうが強いので、米国株が割高な状態のまま3万円を目指すことはありえません。2018年にNYダウ平均が大幅な調整をするという仮定に立てば、それに引き寄せられるように日経平均も売られるという見方のほうが妥当なように思われます。

(5)NYダウ平均が26000ドルにまで達してしまっては、割高という水準というよりは、プチバブルの水準に入ってきたといってよいのかもしれません。米国株が上がれば上がるほど、上昇ピッチが速ければ速いほど、その反動が大きいことを意識せざるをえません。ウォール街の投資家の多くは音楽が鳴り止むまで踊り続けるつもりであり、音楽が鳴り止んだ途端に舞台から降りる準備もできているといいます。そのような話を聞いていると、相場の潮目が変わった途端にパニック的な売りが出るのではないかと心配になっています。

次に、今後の対応方法については、以下の3点に留意したいと考えています。

(1)株価がさらなる暴落へと続くのか、あるいは反転してくるのか、そのカギを大きく握るのは、・・・・(以下、省略)

経済展望レポート(2017年11月14日号)

先週末、ある週刊誌の取材を受けた時に、「マネックス証券の松本大さんは、日経平均が3万円まで上がるという話をされていますが、中原さんはどのようにお考えになるでしょうか」という質問を受けました。週刊誌の記者によれば、松本さんはその根拠として、「最近の日経平均の大幅な上昇は、日本がいよいよデフレから脱却し、インフレになるということを意味している」「インフレの時代には、日経平均の採用銘柄の新陳代謝も進み、日本株は米国株並みに買われる存在になる」といった事柄を挙げているということです。

この質問に対する私の回答は、「そのようになるわけがない」というものですが、主に次に申し上げる4点に要約できると思います。まず1点目として指摘したいのは、証券会社の会長・社長といった役職にある方々は、決して株価の見通しを悲観的に述べることはないということです。本人が本当はどう思っていようとも、手数料の減少に直結するような見解は言わないという不文律があるのです。ですから、株価が下がっている時には「将来的には上がる」という楽観的な見通しを述べますし、株価が大幅に上昇している時には、「もっと上がる」と強気な見通しを立てる傾向が強いわけです。

次に2点目として指摘したいのは、日本はこれから少子高齢化が加速し、労働力人口が減少の一途を辿る一方で、年金受給者が増え続けていくということです。この事実は、国民一人あたりの平均所得(可処分所得)が徐々に減っていくということを意味しています。30年~50年のスパンで見れば、年金額が300兆円~500兆円の積み立て不足に陥っているなかで、将来的には受給額の引き下げ圧力が高まっていくのは不可避な情勢です。年金受給者が増え続けるなかで、国民はインフレを決して望まないでしょうし、そもそも労働者が減り続ける状況下では、いくら経済金融政策で取り繕ってもインフレになるわけがないのです。

3点目として指摘したいのは、最近の日経平均の急ピッチな上昇は海外投資家の買い越し額の急増によるもので、このような買い越しは長続きしないだろうということです。前号でも述べましたように、海外投資家が日本株を買ったのは、米国株の上昇幅・上昇率と比べて、日本株に相対的な割安感が高まったという要因があります。過去1年間でNYダウ平均は30%程度、S&P500種は20%超の上昇をしていますが、今後も米国株が同じようなペースで上昇しないかぎり、・・・・(以下、省略)


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